2026 年の 6 月から 10 月にかけて、OpenAI と Anthropic は API の料金を続けて下げました。入力と出力の単価に目が行きがちですが、Claude Code や Codex のように AI に作業を任せる使い方では、キャッシュ読み取りという目立たない料金のほうが請求額を大きく左右します。
この記事の要点
- 2026 年 9 月に出た Claude Opus 5.5 はキャッシュ読み取りが Opus 5 より 60% 安い $0.20、GPT-6.1 Sol は GPT-6 Sol の半額の $0.10 で、どちらも入出力の単価より大きく下がっています(100 万トークンあたり)。
- AI が自分で何往復も作業する使い方では毎回それまでの会話を送り直すので、キャッシュの単価と使い回せた割合で実際の入力単価がほぼ決まります。95% 使い回せたとする私の試算では、GPT-6.1 Sol が約 $0.20、Opus 5.5 が約 $0.39 です。
- API で使った分だけ払う人には値下げがそのまま効きますが、サブスクの人は月額が同じまま使える量が動くだけです。ChatGPT Pro 200 の新規契約は、使用量の枠が小さくなりました。
キャッシュ読み取りとは
キャッシュ読み取りは、前のやりとりで処理済みの入力を、モデルの側で使い回すときの料金で、ふつうの入力より安い単価で数えられます。使い回す前に、最初の書き込みで少し高い料金(Anthropic の場合)がかかる点も押さえておいてください。OpenAI の発表ページによると、GPT-6.1 Sol では標準の入力より 95% 安く設定されています。
これが効いてくるのがエージェント型コーディングです。指示を出すと自分でファイルを読み、直して、試すところまで何往復も続けてくれる助手のようなもので、実際には Claude Code や Codex のように AI が複数のターンを自分で回してコードを書く使い方を指します。1 ターンごとにどこへ料金がかかるのかを図にすると次のとおりです。
ターンが進むほど会話は長くなり、そのほとんどが処理済みの部分に入っていきます。元記事の筆者は、エージェント型コーディングではキャッシュ読み取りがトークン費用の 96〜99% を占め、使い回せる割合(ヒット率)は 90〜100% ほどだと見積もっています。測定データの付かない見立てではありますが、Anthropic も Opus 5.5 の発表でキャッシュ読み取りを「エージェント作業やコーディングのコストの大半を占める」と書いているので、公式も同じ方向を見ているわけです。
値下げの中身はキャッシュに寄っている
新しいモデルとひとつ前のモデルの料金を並べると、キャッシュ読み取りの下げ幅が入出力より大きいことが見えてきます。単位は 100 万トークンあたりの米ドルです。Opus の行と GPT-6.1 Sol の数字は 2026 年 10 月 26 日時点で各社の発表ページから確かめたものです。GPT-6 Sol と Fable の数字も、OpenAI と Anthropic の発表ページで確かめました(GPT-6 Sol のキャッシュ読み取りは、公式の「90% 割引」から出した値です)。
| モデルの変化 | 入力 / 出力 | キャッシュ読み取り |
|---|---|---|
| Opus 5 → Opus 5.5 | $5/$25 → $4/$20 | $0.50 → $0.20 |
| GPT-6 Sol → GPT-6.1 Sol | $2/$10 → $2/$10 | $0.20 → $0.10 |
| Fable 5 → Fable 5.1 | $10/$50 → $10/$50 | $1 → $0.25 |
Opus 5.5 は入出力が 20% の値下げなのに対して、キャッシュ読み取りは 60% 下がりました。GPT-6.1 Sol に至っては入出力を据え置き、キャッシュだけを半額にしています。見出しの入出力価格だけで比べていると、こうした差はまるごと見落としてしまいます。
元記事は Fable 5.1 のキャッシュ読み取りが 75% 下がった点を取り上げ、ヒット率が高い使い方なら利用コストも 70〜75% 下がる計算になると書いています。ただし Anthropic の発表では、Fable 5.1 の費用は典型的な使い方で約 25%、エージェント中心の使い方でも最大でおよそ 45% の削減とされているので、元記事の数字は上限に近い見立てとして読んでください。
実際の入力単価はどう見積もる?
キャッシュが効く前提なら、入力の単価は次の式でおおよそ見積もれます。元記事の考え方を式にしたもので、公式の計算方法ではありません。
実効入力単価 ≒ ヒット率 × キャッシュ読み取り単価 + (1 − ヒット率) × 入力単価
この式に公式の価格を入れ、ヒット率ごとに 2 つのモデルの実効入力単価を出したのが次の表です。100 万トークンあたりの私の試算です。
| ヒット率 | GPT-6.1 Sol | Opus 5.5 |
|---|---|---|
| 0%(使い回しなし) | $2.00 | $4.00 |
| 90% | $0.29 | $0.58 |
| 95% | $0.195 | $0.39 |
ヒット率が 95% から 90% に落ちるだけで、実効単価は約 1.5 倍に開きます。どちらのモデルも、使い回せなかった分はキャッシュの 20 倍の通常単価で数えられるからです。料金表の入力単価よりも、自分の使い方でどれだけキャッシュが当たっているかのほうが請求額に効いてくる、と私は見ています。なお 95% はあくまで仮の値なので、実際のヒット率は手元の Codex や Claude Code のログで確かめてください。
サブスクの人には値下げがどう効くのか
API の値下げは、使った分だけ払う人とサブスクで使う人とで効き方が違います。2026 年 10 月 26 日時点で公式に確かめられた動きは次のとおりです。
| 使い方 | 変わったこと |
|---|---|
| API の従量課金 | 単価の値下げがそのまま請求に効く |
| ChatGPT Pro 200 | 月額 $200 のまま、新規は枠が小さく |
| Claude Pro / Max / Team | 5 時間ごとの上限を引き上げ |
OpenAI のヘルプによると、ChatGPT Pro は月額 $100、$200、$500 の 3 プランです。Pro 200 は 2026 年 9 月 22 日から 29 日午前 10 時(太平洋時間)までに契約していた人だけが 10 月 29 日まで以前の枠を使え、それ以外は低い使用量枠になります。理由は「モデルの効率化を反映するため」とされています。元記事は Codex の使用量が 50% 減ったと書いていますが、ヘルプには減り幅の数字が載っていません(2026 年 10 月 26 日時点)。公式に書かれているのは「低い使用量枠になる」ことまでです。
一方の Anthropic は、Opus 5.5 の発表と同時に Pro、Max、Team、席課金の Enterprise で 5 時間ごとの上限を引き上げ、レート制限もリセットしました。私の手元の Claude は Max プランなので、この対象に入ります。サブスクの場合、同じ月額で使える量が増えるか減るかは会社の判断しだいなので、値下げのニュースだけでは得をするかどうかは決まりません。
使いどころと注意点
API でエージェントを回しているなら、モデルを入力単価で選ぶ前に、ログでヒット率を確かめてから上の式に当てはめるのがおすすめです。そのほうが、どのモデルが実際に安いのかをつかみやすいはずです。GPT-6.1 Sol は API では gpt-6.1-sol を指定し、Codex では ChatGPT の Plus 以上のプランで選べます(Chat では未提供です)。Claude Code では Opus 5.5 を選びます。使えるプランの一覧は発表ページに書かれていないので、お使いのプランで選べるかは Claude Code の画面か公式のヘルプで確かめてください。
数字の読み方にも気を付けたいところがあります。Anthropic の「Opus 5 より 40% 安い」は典型的なワークロードでの話で、タスクあたりのトークン数が減った分も含んでいるため、単価の下げ幅とは別物です。また価格は各社の発表ページで確かめたもので、API の料金表そのものは見られていません。
日本での提供と円建ての料金は、どちらの発表ページにも書かれていません(2026 年 10 月 26 日時点)。価格はドル建てで示されています。Anthropic は Opus 5.5 の発表で、Sonnet 5.5 と Haiku 5.5 を今後数週間で出すとしていますが、公開状況と価格は確かめられていないので、使う前に最新の料金表と突き合わせてください。
上の式は出力とキャッシュ書き込みの料金を含んでいない点も覚えておくとよいです。Opus 5.5 のキャッシュ書き込みは $5 と、入力の $4 より高く設定されています。
もっと知りたい人へ
値下げが続いた理由
元記事の筆者は理由として、DeepSeek や Kimi などのオープンウェイトモデルと OpenRouter 上の多数の推論プロバイダーによる価格圧力、両社の IPO の観測、推論の効率化、両社の値下げ合戦の 4 つを挙げています。「トークン価格は今は不自然に安く、いずれ上がる」という説には否定的で、価格は限界費用に近づくと予想しています。IPO は元記事が引いた報道(OpenAI が 2027 年、Anthropic が数か月以内という噂)で、両社は公式には発表していません。
オープンウェイトとの比較
オープンウェイトの数字は元記事の引用で、公式の料金ページでは確かめていません。元記事によると、DeepSeek V4 Flash 0420 は $0.14 / $0.28 / $0.0028 で、キャッシュ読み取りは入力のわずか 2% です。OpenAI と Anthropic は、公式の価格で 2.5〜10% の水準です。ほかに DeepSeek V4.1 Flash 1017 が $0.15 / $0.60 / $0.003、Kimi K3.1 Pro が $2 / $10 / $0.20 とされています。Kimi は Artificial Analysis の指数が 55 と、Opus 5.5 の 58 に近いそうで、重みの公開は 11 月 4 日の予定と書かれています。
全体の支出は増えている
Vercel AI Gateway の 2026 年 10 月版の指標では、9 月までに AI への支出は 13 倍に増え、トークンあたりのコストは半分になりました。オープンウェイトモデルはトークンの 71.5%、支出の 23% を占めます。どれも公開価格での推計なので、実際の請求額とは違う場合があります。
期間限定の価格と速いモード
元記事によると、GPT-5.6 Sol は 8 月 21 日から 3 か月間、約 20% 安い $4 / $20 / $0.40 になっていました。終了日は公式で確かめられていませんが、GPT-6 Sol が $2 / $10 で出ているので、いまこの価格を選ぶ理由は薄いです。
Opus 5.5 の Fast mode は最大 2.5 倍速で、価格は入力 $8 / 出力 $40 です。GPT-6.1 Sol の Ultrafast は Codex で最大 8 倍速とされ、OpenAI のヘルプでは Pro 500(月額 $500)にだけ含まれます。Pro 100 と Pro 200 では、クレジットを買っても使えません。API での Ultrafast の料金は、確かめた範囲では見つかりませんでした。