Moonshot AI が 2026 年 10 月 23 日に Kimi K3.1 Pro を公開し、重みも 11 月 4 日までに公開すると予告しました。重みが出れば手元の機材で動かす道が開けますが、3T 級のモデルにはどれくらいの機材が要るのでしょうか。先に重みが出た Kimi K3 の数字を目安に、API で使う場合と比べます。情報は 2026 年 10 月 25 日時点のものです。
この記事の要点
- 重みはまだ公開されていません。K3 の GGUF は最も小さい量子化でも 466GB あり、500GB 前後のメモリを 1 台に積んだ機材がスタートラインです。
- メモリ 512GB の Mac Studio で K3 を枝刈りして動かした事例があります。ただ英語とコードだけを手がかりに削っているので、日本語で使うなら避けたほうが無難です。
- API は OpenAI 互換で、回答の前の推論(thinking)は切れず、
reasoning_effortのデフォルトは max です。単価は Simon Willison などによると 100 万トークンあたり入力 $2.00、出力 $10 ですが、公式の価格表ではまだ確かめられていません。
Kimi K3.1 Pro とは
Kimi K3.1 Pro は、Kimi K3 をはるかに多い計算量で後学習(事前学習のあとの追加の学習)したモデルです。コンテキストは 1M トークンで、2〜3 倍速いとされる Highspeed 版も同時に出ました。
元になった K3 は、混合エキスパート(MoE)という作りです。K3 の公式ブログでは総パラメータが 2.8T で、896 の expert のうち 16 を使います。K3.1 Pro の公式ブログには「3T-class」とあるだけなので、同じ構成かは重みの公開後にわかります。
MoE は、大きな総合病院に例えられます。病院には専門の違う医師が大勢いますが、1 人の患者を診るのはそのうちのごく一部ですよね。MoE では文章の 1 語 1 語(トークン)が患者にあたり、診察の段階(層)ごとに、どの医師(expert)を呼ぶかが変わります。誰が呼ばれるかは患者が来るまでわからないので、医師は全員そろっていないといけないんです。手元で動かすときに重みを丸ごとメモリに載せるのは、このためです。
手元で動かすのに要るメモリ
K3.1 Pro の GGUF(llama.cpp などで使うモデルファイルの形式)はまだ無いので、Unsloth が配っている K3 の GGUF を目安にしました。
| 量子化 | サイズ |
|---|---|
| UD-Q1_0(最小) | 466GB |
| UD-IQ1_S | 594GB |
| UD-Q2_K_XL | 861GB |
| UD-Q4_K_XL | 1.51TB |
| UD-Q8_K_XL | 1.56TB |
いちばん小さくても 466GB です。私の手元の M1 Max の Mac も、Radeon RX 9070 XT(VRAM 16GB)の Windows の PC もメモリ(RAM)は 64GB なので、7 倍以上の開きがあります。足りない分を SSD で補う手もありますが、次の節の Zenn の記事によると、1bit の量子化を SSD に逃がして動かすと、試したリクエスト 1 件に 3 時間かかったそうです。K3 の数字から考えると、500GB 前後のメモリを積んだ機材がスタートラインです。
枝刈りして 441GB にした K3 の事例
2026 年 8 月 2 日の Zenn の記事に、K3 を Mac Studio(M3 Ultra、メモリ 512GB)1 台で動かした個人の事例があります。REAP という手法で各層の expert を減らし、1bit 級の量子化と組み合わせて、512GB のメモリに収まる大きさにしたものです。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| expert の数 | 896 から 640 に(29% 減) |
| ファイルのサイズ | 441GB |
| 出力の速さ(decode) | 約 3.0 tok/s |
| 入力を読む速さ(prefill) | 約 47 tok/s |
decode が 3 tok/s だと、1,000 トークンの回答に 5 分以上かかります。対話より、寝かせておける処理向きの速さです。
気を付けたいのは日本語です。病院の例えで言えば、英語とコードの患者だけで忙しさを測り、出番の少なかった医師を帰してしまったようなものです。実際この事例では、英語とコードだけの約 26 万トークンを手がかりに、残す expert を決めています。同じ記事が引く別の実測では、中国語と日本語でよく選ばれる expert の重なりは 42.8% しかなく、英語とコードだけで削ると中国語が壊れたそうです。日本語でも崩れる可能性が高いので、私なら日本語の用途には使いません。
API で使うときの仕様
API は OpenAI 互換で、base_url を変えれば openai のライブラリからそのまま呼べます。https://platform.kimi.ai/ でキーを作り、$1 以上をトップアップすると使えるようになります。
import os
from openai import OpenAI
client = OpenAI(api_key=os.environ["MOONSHOT_API_KEY"], base_url="https://api.moonshot.ai/v1")
response = client.chat.completions.create(
model="kimi-k3.1-pro",
reasoning_effort="high",
messages=[{"role": "user", "content": "..."}],
)
ほかのモデルと同じつもりで使うと、引っかかる点があります。
| 項目 | K3.1 Pro での扱い |
|---|---|
| thinking | 常にオンで、切れない |
reasoning_effort | low・high・max の 3 段階。デフォルトは max |
| 出力の上限 | デフォルト 131072、最大 1048576 トークン |
| temperature など | 固定値。リクエストに含めない |
| 会話の続き・ツール呼び出し | reasoning_content ごと返す |
| 画像の入力 | base64 か ms://<file-id>。公開 URL は使えない |
| Web 検索のツール | 本番では非推奨 |
何も指定しないと max で考え続けて遅く高くなりがちなので、reasoning_effort は明示しておくのがおすすめです。
料金は、Simon Willison と Artificial Analysis によると 100 万トークンあたり入力 $2.00、出力 $10 で、Simon はこれを Claude Opus 5.5 の半額としています。公式の価格ページでは、単価をまだ確かめられていません。
使いどころと注意点
API とローカルのどちらを選ぶかは、次の順番で考えるとすっきりします。
多くの人には API が現実的です。API では Zero Data Retention(入出力を保持しない扱い)も使えるので、社内の規程によってはこれで足ります。ローカルが候補になるのは、データを外に出せず、500GB 級の機材もある場合に限られそうです。
公式は長いコーディングの社内ベンチを強調しているので、コーディングエージェントのモデルを差し替えて比べるのが合いそうです。既存のツールの接続先を変えて試すなら、ツールが reasoning_content を返せるかと、固定のパラメータを送らないかを確かめてください。
ローカルを考えているなら、重みが出た時点で、model card のパラメータ数、重みの形式、ライセンス、ファイルサイズ、推論エンジンの対応をまとめて確かめ直すのが先です。1bit の量子化や枝刈りで動かした版の品質は、公式の数字とは別物です。日本語の性能は公式に数字が無いので、日本語の業務なら API で品質を見てからローカルを検討する順番が無難だと思います。
もっと知りたい人へ
性能の数字の読み方
公式ブログは Terminal-Bench 4.0 で K3.1 Pro が 65.7%、Claude Opus 5.5 が 66.4%、GPT-6 Astra が 58.2% と並べています。ただ K3.1 Pro は Claude-Code の harness で測った値で、他社の数字は各社の公表値の最大値なので、同じ条件の比較ではありません。第三者の Artificial Analysis では Intelligence Index が 55 で、215 モデル中 4 位でした。Moonshot の社内ベンチ Kimi Hallu Bench の、難しくツールありの条件では、主張ごとの幻覚率が K3 の 23.4% から 8.3% に下がったと公式は書いていますが、日常の利用での誤り率ではないとも注記しています。
K3 を llama.cpp で動かしたときの設定
Zenn の記事は、Unsloth がフォークした llama.cpp を次のように起動していました。
llama-server -m <gguf> -ngl 99 -c 131072 --jinja --cache-reuse 0 --temp 1.0 --top-p 0.95
--cache-reuse 0 は外せません。K3 の KDA は、前の内容を 1 つの状態に畳み込んでいく再帰的な仕組みなので、前回と共通する先頭部分の計算結果を一部だけ使い回すと、状態が壊れるためです。本家の llama.cpp への K3 対応(PR #26185)は、Zenn の記事が書かれた 8 月の時点では未マージで、その後の状況と K3.1 Pro への対応は確かめられていません。枝刈り版は SWE-Lancer(Diamond)の 8 タスク中 5 本に正解し、追試では 5 本中 2 本だったと報告されていますが、試行数が少ないので「この構成で動いた」という報告として読むのがよさそうです。この事例の前段にあたる MLX 版は、expert を 73% 削った 451GB のもので、24k トークンのプロンプトで無限ループに陥ったそうです。
ライセンスとサイバー能力
K3.1 Pro のライセンスは、公式ブログに書かれていません。K3 は、API として売る事業で 12 か月の売上が $20M を超えると別の契約が要るなどの条件があると Developers Digest が要約していますが、原文は確かめていません。また Moonshot は、オープンウェイト版のためにサイバー関連のデータを学習から除いたそうです。社内ベンチの xdev-bench-hard(pass@3)では、除かなかった場合が 90.5%、K3.1 Pro が 81.0%、K3 が 33.3% でした。API 版が同じ重みかは書かれていないので、セキュリティ寄りの用途では、ローカルのオープン版が API 版より弱い可能性もあります。
料金と提供範囲の細かい点
Highspeed 版のモデル ID は kimi-k3.1-pro-highspeed で、Simon Willison によると価格は 2 倍です。キャッシュは自動でかかり、書き込みは保持期間(5 分と 1 時間)ごとに課金され、ヒットした入力にはヒット価格だけがかかります。入力の長さによる価格の段階はありません。旧世代の K2 系は 10 月 31 日から新規ユーザーが使えなくなり、2026 年末までに廃止される予定です。Kimi.ai や Kimi Work、Kimi Code(/model で選ぶ)でも使えますが、どのプランで使えるかや、日本から課金できるかは、公式の記載を確認できていません。